相続問題2.配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現

現在検討されている民法の改正点の記事ですが原文を掲載します。

2.配偶者の貢献に応じた遺産分割の実現

問題点:配偶者の貢献が考慮されない

結婚してから得られた夫婦の財産は共有財産であるという考え方があります。ある人が財を成したとすれば、それは夫婦が協力して成し遂げたとされます。実際、離婚における財産分与では、配偶者に夫婦共有財産の2分の1の取得を認めることが一般的になっています。

相続での配偶者の法定相続分は2分の1ですが、夫婦の婚姻期間が長い場合には、夫婦共有財産のうち自分の分(半分)を取り戻したにすぎないという指摘があります。貢献した配偶者にとっては実質不公平だろうということです。

対策:配偶者の法定相続分を増やす(配偶者:子供=2:1など)

案はいくつかあります。

案1:配偶者の貢献度合いを計算して法定相続分を決める

夫婦共有財産(婚姻後、夫婦が共同で形成したもの)と固有財産(被相続人が婚姻前から持っていた財産と、相続・贈与で手に入れた財産)に区別し、夫婦共有財産の取り分は現在よりも多くし、固有財産の取り分は現在よりも少なくします。
たとえば、相続人が配偶者と子供の場合、夫婦共有財産については、配偶者が3分の2、子供が3分の1としますが、固有財産については、配偶者が3分の1、子供が3分の2とします。

つまり、夫婦共有財産が多ければ、現在の法定相続分2分の1よりも増えますが、夫婦共有財産が少なければ、逆に2分の1よりも減ります。

案2:婚姻期間が一定以上の場合、届出で法定相続分を増やす

たとえば婚姻期間が20年以上で、相続開始時まで夫婦であったときは、被相続人が配偶者の相続分を引き上げることを届け出ることによって、次のように配偶者の相続分を増やします。

・配偶者:子供  =2:1(配偶者が3分の2) [1:1(配偶者が2分の1)]
・配偶者:直系尊属=3:1(配偶者が4分の3) [2:1(配偶者が3分の2)]
・配偶者:兄弟  =4:1(配偶者が5分の4) [3:1(配偶者が4分の3)]
[]内は現在の割合

案3:婚姻期間が一定以上の場合、当然に法定相続分を増やす

案2と似ていますが、届け出なくても婚姻期間の条件を満たせば当然に配偶者の相続分を増やします。

課題点:貢献度合いの判定が難しく、トラブルを助長するおそれも

まず、個別の案に対する課題点をあげますと、
案1の場合、配偶者の貢献度合いを測るために、夫婦共有財産と固有財産に分ける必要がありますが、どれが夫婦共有財産でどれが固有財産なのか分けることは非常に難しいものがあります。銀行に預金があったとして、それが結婚前から自分で持っていたものか、結婚後にためたものか判定するには、何十年も前まで遡らなければならず、財産調査にかかる期間が大幅に長くなる可能性があります。また、現在の法定相続分2分の1よりも減ることもありますので、トラブルが予想されます。

案2の場合、届け出が必要ですが、届け出をした/していないだけで割合が大きく変わることになり、届け出に関するトラブルが予想されます。被相続人が認知症になった場合、誰が届け出の判断をするのかという問題もあります。

案3の場合、婚姻期間の条件だけですので他の案と比べると簡単に思われますが、貢献していない配偶者でも一律に割合が増えてしまい、そもそも貢献に応じた遺産分割にはならないという問題もあります。

また、全体的な課題点としては、配偶者の貢献度合いを考慮するというのは現在の寄与分の考え方と似ていますが、寄与分の判定はトラブルになりやすいポイントです。配偶者が実際にどれだけ貢献したのかを、配偶者と他の相続人の間で議論することは難しく、遺産分割がさらに長期化・複雑化するおそれもあります。

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