生命侵害によ る損害賠償請求権の相 へ
事例
父が信号無視をした車による交通事故で亡くなりました。遺族として、加害者に対
しどのような請求ができますか。父が即死した場合と、重傷を負いしばらくして死亡
した場合とでは異なりますか。
回答は
請求権と非財産的損害賠については
償請求権の両方について相続して、加害者に請求できます。即死の場合と、
重傷を負った後死亡した場合とでは差はありません。
生命が奪われたことによる損害他人の違法な行為によって生命が奪
われた場合に、その損害にはどのようなものがあるのでしょうか。
生命侵害による損害は、財産的損害と非財産的損害に分げて考えられてい
ます。財産的損害には、葬儀費用や医療関係費のほか、死亡した人の逸夫利
益があります。逸夫利益とは、生命がへ奪われなげれば、相応の年齢まで働い
て収入をあげることができるので、その得られるはずの収入から死亡した人
本人の生活費と一括前払いをうげることによる中間利息を差し引いたものを
いいます。
非財産的損害というのは、生命が奪われたことによる精神的損害、
すなわち慰謝料のことです。
これらの損害について、相続の対象になるかどうかが問題になります。
財産的損害賠償請求権の相続
死亡による財産的損害は、それが発生する時点では木人は死亡しているか
ら、死亡者本人は財産的損害賠償請求権を取得することはできず、したがっ
てまたその相続ということもあり得ないのではないかという疑問が出されま
した。しかしそうすると、重傷を負ってその後死亡した場合には、重傷を負
ったことによる損害賠償請求権が発生しそれが相続されるのに対し、即死の
場合には相続されないという不均衡が生じてしまいます。そこで現在では、
即死の場合も含めて、死亡者本人に発生した死亡による財産的損害の賠償請
求権が相続人に相続されると考えられています。
非財産的損害賠償請求権の相続
非財産的損害賠償請求権、すなわち慰謝料請求権については、
①財産的損害賠償請求権と同様に、死亡者木人について慰謝料請求権が発生するかとい
うこと、
②慰謝料請求権の性質から相続の対象にならないのではないかとい
うことが問題になりました。
従前はこれらの問題について、精神的な苦痛に対する賠償請求権は本来主
観的なものでその人かぎりのものであるが、被害者本人が賠償請求の意思を
明らかにした場合に初めて相続の対象となると考えられました。この被害者
本人の請求の意思については、「残念、残念」と叫びながら死亡したような場
合にも、請求の意思ありとしました。
その後、以上のような考え方は、即死の場合に救済の余地がないことから批
判がなされ、現在では、被害者が慰謝料請求権を放棄したような特別の事情
がないかぎり、被害者本人が慰謝料請求権を取得し、それを相続人が相続す
ると考えられるようになっています。
遺族固有の慰謝料請求権との関係
民法711条は、生命が侵害された場合、一定の遺族に固有の慰謝料請求権
を認めています。したがって、死亡者の遺族としては、死亡者本人の慰謝料
を相続したものと固有の慰謝料の両方を請求できます。ただし、その総額と
しては、両方を請求する場合と一方のみを請求する場合とで、あまり差がな
い金額が認められています。
コメント